🌱 テーマ：他者意識への目覚めと成長

 

1. 背景：不登校からの脱却という土壌

• 小学校2年生という発達段階での不登校は、心の安全基地が学校に見いだせなかったことの表れともいえます。

• 家庭での安定が唯一の拠り所だった彼女にとって、通学や集団生活は“他者”の世界への第一歩。

• この背景を持つことで、他者に対する感度や関心が、健常発達の子よりも逆に繊細で深いということもあります。

 

2. きっかけ：交通安全ポスターの創作と「掲示された」体験

• 自分の作品が“社会に認められる・役立つ”体験は、自己肯定感の爆発的な触媒になります。

• 警察が掲示してくれたという「大人がちゃんと受け取ってくれた」経験は、彼女の中で“他者＝こわい・よくわからない”存在から、“見てくれる・ありがとうと言ってくれる”存在へと意味変化を起こした可能性が高いです。

• このようなフィードバックのある成功体験は、療育・教育の実践でも非常に重要視されています。

 

3. 年齢レベル：小3という発達段階の意味

• 小学3年生（8〜9歳）は、心理学的には「仲間意識」や「社会性」が芽吹く時期です（エリクソンの発達理論では「勤勉性 vs 劣等感」）。

• 今までは「自分の世界」が中心だった子どもが、「誰かのため」「誰かといっしょに」の価値を感じやすくなる時期。

• この時期に“ありがとうを言う”などの他者への働きかけが出てくるのは、非常に自然でかつ健全な発達サインです。

 

4. 教育・療育的視点から

• 親子で一緒にポスターを作るという“協働的作業”は、家庭療育として非常に優れています。

• 自分の考えを形にして、実際に“見える化”し、世の中へ送り出すというプロセスは、「表現→評価→承認→成長」の連鎖を生みます。

• 療育ではよく「意味のある役割を与える」ことで自発性と他者意識を育てますが、まさに自然な形でそれが実現された実例です。

 

5. しつけとの違いと親の関わり

• 「ありがとうを言いなさい」と教え込む“しつけ”ではなく、自分の中から「ありがとう」が出てきたという点が非常に大きい。

• これは、**外的規範の内面化（内発化）**が始まったサインです。

• ママやおばあちゃんが「待つ・見守る」姿勢を取り続けたからこそ、子ども自身が“気づく”チャンスを得られたとも言えます。

 

6. 妹への接し方の変化＝内面の成長の証拠

• 年下の存在に対する態度の変化は、自分以外の立場・感情への想像力（共感性）の芽生えです。

• これが自然に出てきたことは、「他者意識」が単なる“人がいる”から“その人の気持ちを考える”レベルに育ってきた証拠。

• 心の中で「相手のことを考える余裕」が出てきたからこそ起こる現象です。

 

7. 自発性という根っこの力

• 親が「やりなさい」と言ったのではなく、本人が「作りたい」と言い出したことがポイント。

• これは、自分が“社会とつながる”意志を内に芽生えさせたということ。

• 教育や療育では、この自発性をいかに引き出すかが核心であり、彼女の場合はパソコンという“ツール”がその役割を担ったのです。